12.17
【ゼミ生リポート】フランスの新聞事情
(執筆:井田正利)
フランスのメディアに於いて日本と大きく異なる点の一つが、新聞です。フランスでは日本のような新聞の戸別配達が一般的ではなく、新聞を読みたい場合は町中で手に入れています。
多くの日本人にとって、フランスの新聞といえば “Le Monde” (ル・モンド) や “Le Figaro” (ル・フィガロ) が有名ですが、実際に街で読んでいるひとは見かけません。多くの人はメトロや国鉄の駅などで配られるフリーペーパーを読んでいます。
大きな駅ではこのように新聞を配布する人が立っているほか、比較的小さなメトロの駅やショッピングセンターでは専用の箱に平積みになっているところから自由に取れるようになっています。 “Direct Matin” (ディレクト・マタン)、 “20 Minutes” (ヴァン・ミニュット)、 “ Métro”(メトロ) の3つがシェアを分け合っています。
これらフリーペーパーはその紙面の多くを占める広告の収入で利益を出しています。フリーペーパーとは言え、各紙は既存の報道機関が制作しているものもあり(上掲のDirect MatinはLe Mondeの系列)、その日の社会情勢が電車内で読めるコンパクトな記事にうまくまとめられています。
報道内容を見ると、フリーペーパーでは各地域のローカルニュースをトップニュースにし、多くの紙面を割いて報道しています。ここで取り上げたDirect Matinはリヨンでもらったものだったので、ホームレスである等の理由で屋根がない劣悪な環境に置かれる子どもがリヨンで増えていることがトップニュースになっています ( “TROP D’ENFANTS SANS TOIT” ) 。
一方で、Le MondeやLe Figaroといった旧来の新聞を買う場合は、町中の新聞屋で買うことになります(昼の写真がパリ、夜の写真がリヨン)。こうした新聞屋では高級紙のほか大衆紙や雑誌、店によっては宝くじやタバコ、観光客向けのちょっとしたお土産も販売していたりします。新聞1部の値段はおよそ2ユーロちょっと、日本円にして300円ほどです。
Direct MatinとLe Mondeを並べてみると、Le Mondeの方が一回り大きいのがわかります。また、Direct Matinは広告が紙面の多くを占めているのに対し、Le Mondeは記事主体で且つ文字も小さいため、かなり多くの記事が書かれている印象を受けます。
Direct Matinが主要ニュースにローカルニュースを持ってきていたのに対し、Le Mondeでは国際ニュースが先頭に来ています。今回のトップニュースはシリア内戦についてでした。また、ほかのページを見てもフランス国内外の硬派なニュースをかなり多く報じており、Direct Matinとの編集方針の違いが見て取れます。
日本では大手の新聞が数百万部売り上げているのに対し、フランスではフリーペーパーの進展とともに大手新聞の発行部数は徐々に減少しています。今回Direct MatinとLe Mondeを比べてみましたが、フランス国民は情報をより端的に、よりスピーディに、そして無料で享受したいと考えているようになっているといえるのかもしれません。